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結論から言います。迎えて数日、ごはんを食べないことは珍しくありません。理由の多くはフードではなく環境です。だから最初の1〜2週間は、前の場所と同じごはんを続けてください。ただし、成猫がまる24時間食べない、またはいつもより少ない状態が3日続くときは、動物病院に相談してください。
いま検索している方の多くは、迎えて1日目か2日目だと思います。用意したごはんに口をつけない。ケージの奥から出てこない。このまま弱っていくのではないか。そういう時間帯にこの記事は読まれます。
その状態で最初にすべきことは、実は「何かをする」ではありません。やらないことを決めるほうが先です。フードを次々に変える、匂いの強いものを次々に足す、無理に口へ運ぶ。よかれと思ってやることの一部は、食べ始めるまでの時間をかえって長引かせます。
この記事は、国際猫医学会(International Cat Care / ISFM)と米国猫医学会(AAFP)の資料をもとに書いています。シェルターで行われた比較試験の結果も使いました。整理するのは、最初の1週間の食事と部屋の作り方です。数字を書く箇所には、すべて出典へのリンクを付けました。
なお、この記事は病気の診断や治療について述べるものではありません。受診の判断は動物病院の領域です。ここで扱うのは、そこに至るまでの「目安」と、家でできる環境の設計です。
結論:最初の1週間は、フードを変えない
この記事でいちばん伝えたいことを、先に置きます。迎えた直後にフードを変えないでください。変えるとしたら、猫が落ち着いてからです。
最初の1〜2週間は、前の環境と同じごはんを続ける
国際猫医学会は、新しく猫を迎えるときの手順として、こう書いています。前の家で使っていたものと同じ猫砂を使うことを検討し、最初の1〜2週間は同じ食事を与える、と。少なくとも最初のうちは、猫にとって「知っているもの」であることが大切だからです(International Cat Care「Helping your new cat or kitten settle in」)。
理由も同じ資料に書かれています。急な食事の変更と、新しい家に慣れるまでのストレスが重なると、お腹をこわしたり下痢を起こしたりする原因になる、というものです。
保護団体やシェルターから迎えた場合、それまで何を食べていたかを必ず確認してください。可能なら、同じものを少し分けてもらうか、同じ製品を用意しておきます。譲渡の当日にまとめて聞くのは大変なので、事前に聞いておくのがいちばん確実です。
食べない理由の多くは、フードではなく「場所」
新しい環境に来た猫が食べないとき、真っ先に疑われるのは「フードが口に合わない」です。しかし資料が挙げている要因は、まず環境の変化です。
猫は慣れた縄張りと決まった生活の流れに強く結びついて暮らしています。そこから急に引き離されると、身を守ることが最優先になります。食べることは後回しになります。
ただし、これを「だから体調は問題ない」と読まないでください。食べない背景に病気が隠れていることは当然あります。環境が理由である可能性が高いことと、病気でないことは、別の話です。この記事では、体調不良の可能性を最初から最後まで併記します。
この記事で分かること
以下の4つを順番に扱います。
- どのくらい食べなければ、動物病院に相談するのか(資料に書かれている日数と、その出典)
- 最初の3日間、部屋をどう作るか(国際的なガイドラインの「5つの柱」)
- 食べ始めてもらうための、具体的な出し方(食器・温度・回数・置き場所)
- 落ち着いてきたら、どう試すか(食歴が分からない猫の、味と形の探り方)
急いでいる方は、次の章から読んでください。受診の目安をまとめてあります。
なぜ、環境が変わると食べなくなるのか
「うちに来たのが嫌なのだろうか」と考えてしまう方は多いと思います。そうではありません。猫の生き方から見ると、この反応にはかなり明確な理由があります。
猫は「場所に結びつく」動物
猫は単独で狩りをし、単独で身を守ってきた動物です。群れで助け合う仕組みを持ちません。だから、けがや争いはそのまま生存の危機に直結します。
その結果、猫は「場所に結びつく」性質を強く持つようになりました。慣れた縄張り、決まった生活の流れ、予測できる環境。そういうものに囲まれてはじめて、猫は「自分で環境をコントロールできている」と感じます。この感覚が、ストレスの大きさを左右します。
移動はその前提を一度に壊します。匂いも、音も、床の感触も、すべてが未知です。AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines(JFMS 2013)は、猫の種としてのニーズを理解することは「あればよいもの」ではなく必須である、という前提から書かれています。
「お腹が空く」と「食べたくなる」は別のもの
ここは押さえておく価値があります。食べる行動は、2つの別々の仕組みに支えられています。
- 空腹(hunger)——体がエネルギーを必要としている、という生理的な状態
- 食欲(appetite)——食べたいと感じる、精神に駆動される状態
2022 ISFM Consensus Guidelines on Management of the Inappetent Hospitalised Cat(JFMS 2022)は、この2つを区別したうえで、精神的なストレスが食欲を直接落としうると説明しています。
つまり、お腹は空いているのに食べないという状態が、猫では普通に起こります。「お腹が空けばそのうち食べる」という考え方は、猫には当てはめにくいということです。
隠れるのは、わがままではなく対処行動
ケージの奥、家具の裏、押し入れの隅。迎えたばかりの猫は徹底的に隠れます。
環境ニーズのガイドラインは、隠れることをコーピング行動(対処行動)として位置づけています。猫がストレスの多い状況に対処し、望まない接触を避けるための、重要な手段だという扱いです。
興味深いのは、体が完全に隠れている必要はない、という点です。猫の側から脅威が見えなければ、猫はより安全だと感じます。段ボール箱に頭だけ突っ込んでいる状態にも、意味があるということです。
逆に、この手段を取り上げるとどうなるか。逃げられないと悟った猫は、最後の手段として防御的な攻撃に出ます。引っかき、噛みつきは、追い詰めた結果として起こります。
隠れる以外のストレスのサインについては、猫のストレスサイン7選に別途まとめています。過剰な毛づくろい、逆に毛づくろいをしなくなること、寝たふりなども含まれます(International Cat Care「Stress in cats」)。
シェルターでの比較試験が示したこと
ここで、数字のある研究を1本紹介します。オランダのシェルターで行われた無作為化比較試験です(The effect of a hiding box on stress levels and body weight in Dutch shelter cats, PLoS One 2019)。
デザインはこうです。新しく到着した健康な野良猫23頭を、無作為に2群に分けました。片方のケージには段ボール製の隠れ箱(44×31×26cm、出入口が2つ)を置き、もう片方には置きませんでした。そのうえで、Cat-Stress-Score という指標で12日間の様子を評価しています。
結果は2つあります。
- ストレスが落ち着くまでの日数に、7日の差が出ました。隠れ箱のある群は2日目に定常状態へ到達し、ない群は9日目でした。
- 体重減少の差は、統計的に有意ではありませんでした。12日目までの体重減少は、対照群が平均7.7%、隠れ箱群が平均6.3%。差は約40gにとどまりました。
2つ目を正直に書いておきます。隠れ場所を用意すれば食べるようになる、とは言えません。研究自身がそう述べています。落ち着くまでの時間は短くなる。しかし、それだけでは食べない期間の体重減少を止めるには足りませんでした。
だからこの記事では、隠れ場所を「食べさせる方法」としてではなく、他の工夫を効かせるための土台として扱います。土台がないところに工夫を積んでも、崩れます。
どのくらい食べなければ、動物病院に相談するのか
ここがいちばん知りたいところだと思います。先に前提を1つ置きます。これから挙げる数字は「受診の目安」であって、「そこまでは安全」という保証ではありません。数字より手前でも、様子がおかしいと感じたら相談してください。
目安として資料に書かれている数字
日本語で検索すると、36時間、3日、1週間など、まちまちな数字が出てきます。出典が示されていないことがほとんどです。ここでは、出典のあるものだけを並べます。
| 状態 | 資料に書かれている目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 成猫の食欲不振 | 24時間続いただけでも健康に深刻な影響が及びうる | Cornell Feline Health Center「Anorexia」 |
| 生後6週未満の子猫 | 12時間で命に関わりうる | Cornell Feline Health Center「Anorexia」 |
| 完全に食事を拒否している | 48時間以上続くなら直ちに獣医師へ | VCA Animal Hospitals「Anorexia in Cats」 |
| いつもより食べる量が少ない | 3日続けば健康に重大な影響。3日以上なら急いで動物病院へ連絡を | International Cat Care「How to encourage your cat to eat」 |
| 獣医療としての栄養介入 | 食べなくなってから遅くとも3日以内に | ISFM Consensus Guidelines 2022 |
| 迎えたばかりの成猫 | 最初の24時間は食べも排泄もしないことがある。それを超えて続くなら動物病院へ | International Cat Care「Helping your new cat or kitten settle in」 |
用語も整理しておきます。同じ資料の用語集では、完全に食欲を失った状態を anorexia、いつもより食べる量が少ない状態を hyporexia と呼び分けています(International Cat Care「Inappetence in cats」)。「まったく食べない」と「少ししか食べない」は別の状態として記録してください。動物病院に伝えるときに役立ちます。
最後の行が、保護猫を迎えた方にとっていちばん実用的です。不安の強い成猫は、最初の24時間、食事もトイレも使わないことがあります。夜中にこっそり済ませていることもあります。新しいごはんを置き、トイレを定期的に確認しながら見守ります。ただし、それを超えて続くようなら動物病院に相談してください。
犬とは違う、と資料が明記している
犬を飼った経験のある方ほど、「1日くらい食べなくても平気だろう」と考えがちです。国際猫医学会は、この点をはっきり否定しています。
原文はこうです。「短期間なら食事量が少なくても耐えられる犬とは異なり、猫は速やかに治療しなければならない」。そのうえで、自分から食べられない間の栄養支援として、給餌チューブが用いられることもある、と続きます(International Cat Care)。
つまり、犬の感覚をそのまま持ち込むと判断を誤ります。猫では時間の余裕が小さい、という前提で動いてください。迷ったら、まず動物病院に電話で相談するのがいちばん早い解決になります。
「肝リピドーシス」という言葉が出てくる理由
猫が食べない話を調べると、必ずこの病名に行き当たります。何を指しているのかだけ、正確に押さえておきます。
食べない期間が続くと、体はエネルギーを補うために体脂肪の分解を始めます。ところが、猫の肝臓は大量の脂肪を一度に処理することが得意ではありません。処理しきれない脂肪が肝臓にたまる状態が起こりうる、と資料は説明しています。これが肝リピドーシス(脂肪肝)です(University of Illinois College of Veterinary Medicine「Hepatic Lipidosis If Cats Don't Eat」)。
同じ資料は、過体重や肥満の猫でリスクが高くなるとしています。また、この状態になると猫は自分から食べ始めなくなるため、給餌チューブによる栄養補給が必要になることがある、とも書かれています。
ここで大切なのは、この病名を自己診断の材料にしないことです。何日食べていないかを数えて、自分で病名を当てにいく必要はありません。食べていない事実と、その日数を記録して、動物病院に伝えてください。判断はそこで行われます。
食欲以外に見ておきたいこと
食べる量だけでなく、次のような様子も一緒に見ておいてください。資料が挙げているものです。
- 黄疸——歯ぐきや耳の内側、白目が黄色く見える
- ぐったりしている——呼んでも反応が薄い、動きが極端に少ない
- 嘔吐——吐く、または吐こうとして吐けない
- よだれ、口元をなめる——吐き気があるときのサインとして挙げられています
- フードの匂いだけでえずく
- 排泄がない——尿も便も確認できない状態が続く
- お腹が張っている、触られるのを嫌がる
これらは VCA Animal Hospitals と ISFM Consensus Guidelines 2022 が挙げている項目です。
当てはまるかどうかを自分で判断しようとしないでください。やるべきことは、見たままを伝えることです。「昨日の夕方から水も飲んでいない」「今朝、白目が黄色く見えた」。この形で伝われば、動物病院の側で判断できます。写真や短い動画も有効です。
そして、迷った時点で相談していい、ということも書いておきます。相談して「様子を見て大丈夫」と言われるのは、悪い結果ではありません。
最初の3日間、部屋をどう作るか — 5つの柱
ここからは、家でできることに移ります。食べさせる工夫よりも先に、部屋の作り方から入るのには理由があります。土台が整っていないと、どんな工夫も効きにくいからです。
国際的なガイドラインが挙げる「5つの柱」
米国猫医学会と国際猫医学会が共同で出している環境ニーズのガイドラインは、猫に必要な環境を5つの柱という枠組みで整理しています(AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines/American Association of Feline Practitioners)。
- 安全な場所を用意する——身を隠せる、囲まれた、プライベートな場所
- 主要な資源を、複数、離して置く——ごはん、水、トイレ、爪とぎ、寝床、遊び場
- 遊びと狩りの機会をつくる——おもちゃで捕食の動きを再現する
- 人との関わりを、好ましく・一貫して・予測できる形にする
- 猫の嗅覚を尊重した環境にする——匂いの環境を壊さない
この枠組みは家庭にも、動物病院にも、シェルターにも当てはめられるものとして書かれています。迎えたばかりの猫の部屋づくりは、この5つを1部屋の中に凝縮する作業だと考えると、迷いにくくなります。
まず1部屋に限定し、キャリーを開けて待つ
家に着いたら、いきなり家全体に放さないでください。まずは静かな1部屋に限定します。空いている寝室のような、人の出入りが少ない部屋が向いています。
キャリーの扱いには、はっきりした手順があります。キャリーごと部屋に置き、扉を静かに開けて、猫が自分から出てくるのを待ちます。引っ張り出してはいけません。そして、キャリーはそのまま部屋に残します。猫にとって、いちばん馴染みのある匂いがついた安全地帯だからです(International Cat Care)。
隠れ場所は、特別なものを買う必要はありません。同じ資料が挙げているのは、段ボール箱を横に倒して、中に厚手の毛布を敷いたものです。これを部屋の別々の場所に複数置きます。前の環境で使っていた寝床や毛布があれば、そのまま持ち込んで置いてください。匂いがついているぶん、安心感がそのまま移ります。
棚の上や窓辺など、少し高い場所にも身を置ける選択肢があるとなおよいとされています。高い位置は周囲を見渡せて、人や他の動物から直接手を出されにくいためです。
ごはん・水・トイレを離して置く
ここは、やりがちな失敗が集中する場所です。ケージの中にすべてを並べると、猫の視点では「1か所」になってしまいます。
国際猫医学会が示している配置は次の通りです。トイレは部屋の目立たない静かな隅に。フード皿はその反対側に。水皿は、フードとトイレの両方から離して。ただし猫は食後に水を飲むことを好むので、水皿はフードから1メートルほどの距離が理想的だとされています(International Cat Care)。
理由も明快です。野生では、獲物のそばにある水は汚染されている可能性があります。猫はそれを本能的に避けます。実際問題としても、隣に置くと食べかすが水に落ちて汚れます。トイレの近くで飲食しないのは、衛生上の理由です。
数のルールもあります。基本的な資源は「猫の頭数+1」を、家の中の異なる場所に分散して置くとされています(International Cat Care「Making your home cat friendly」)。同じ場所に並べて置いても、猫からは1つの大きな資源としか認識されません。先住猫がいる場合は特に重要で、資源が1か所にまとまっていると、そこを見張られるだけでアクセスが妨げられます。
置き場所の質にも触れておきます。食事中に背後を確認できる、見通しの良い場所を選んでください。猫は食べている間、無防備になることを恐れます。壁を背にして周囲が見渡せる配置が向いています(Feeding Cats for Optimal Mental and Behavioral Well-Being, Vet Clin North Am 2020)。
先住猫がいる場合、お互いの姿が見えない場所で個別に食べさせてください。猫は本来、獲物を分け合わない動物です。同じ場所で食べさせると、食事をあきらめるか、緊張しながら食べるかの選択を強いることになります。
匂いを壊さない
5つ目の柱です。人間が見落としやすいところなので、少し詳しく書きます。
猫は顔や体をこすりつけることで、自分の匂いを置いていきます。そうやって「ここは自分の安全な場所だ」という境界線をつくります。だから、猫が顔をこすりつけた場所を過度に掃除するのは避けたほうがよい、とガイドラインは述べています。せっかく作った境界線を消してしまうからです。
寝床や毛布も、一度に全部洗わないでください。ローテーションで洗い、どれかには猫自身の匂いが残るようにします。洗いたてのものだけになると、部屋から自分の匂いが消えます。
掃除に使うものにも注意が必要です。塩素系や柑橘系の強い匂いを持つ洗剤は、この時期の部屋には向きません。
合成フェロモン製剤を部屋に置くという選択肢もあります。ガイドラインでは、新しい環境の不安を和らげる手段として挙げられています。製品はいくつかありますので、動物病院やペットショップで相談してください。
室内で暮らす猫の環境づくり全般については、RSPCA「Cat environment」にも一般向けの解説があります。
食べ始めてもらうための、具体的な出し方
部屋が整ったら、次は出し方です。ここは、多くの記事が「フードを変える」で片づけてしまう部分です。変えるべきなのは、多くの場合フードそのものではなく、出し方のほうです。
なお、この章で扱うのは「初めて出会う環境で、まだ食べ始めていない猫」の話です。長く一緒に暮らしてきた猫が急に食べなくなった場合は状況が違います。そちらは猫がウェットフードを食べないときの記事にまとめてあります。
食器は「広く・浅く・陶器かガラス」
国際猫医学会が挙げている条件は、広く、浅い、陶器の皿です。理由として、狭い皿だと食事中にヒゲが側面に触れて不快になりうる、という説明が添えられています。
ただし、ここは正確に書きます。Feeding Cats for Optimal Mental and Behavioral Well-Beingは、いわゆる「ヒゲストレス」について、現時点でそれが起きることを示す科学的な証拠はないと明記しています。そのうえで、いくつか違う形の皿で出してみて、その猫がどれを好むかを観察することを勧めています。
ですので、この記事も断定しません。広く浅い皿が好まれる傾向がある。試して、その子が選ぶのを見る。これが正確な書き方です。
素材については、避けたほうがよいものが挙げられています。
- プラスチック——素材自体がわずかに匂いを出すことがあり、それを嫌がる猫がいる
- 金属——光の反射が、一部の猫にとって怖いものになりうる
- フードと水が一体になったダブルボウル——サイズが小さすぎることが多く、フードと水が隣り合ってしまう
陶器かガラスが勧められるのは、この3つを避けられるからです。ガラスは水面の高さが見えやすい、という利点も挙げられています。
温度は体温くらい。ただし吐き気があるときは温めない
フードを少し温めると香りが立ちます。目安として挙げられているのは、猫の体温と同じくらい、およそ38℃です。電子レンジを使うなら、熱いところができないよう全体をよく混ぜてください。
ここには重要な例外があります。気持ちが悪そうなときは、温めないでください。国際猫医学会は、猫が吐き気を感じている場合、強い匂いはかえって状態を悪化させ、食べ物への嫌悪を強めると書いています。その場合は、いつものごはんを常温か、少し冷たいままで、少量ずつ出します(International Cat Care)。
よだれが出ている、口元をしきりになめる、フードから顔をそむける。こうしたサインが出ているなら、温める前に動物病院に相談してください。
もう1つ、同じ資料が明確に禁じていることがあります。人間用の食べ物、特にベビーフードやグレービーソースを与えないでください。玉ねぎが含まれていることがあり、猫にとって有毒だからです。
猫は舌より先に、鼻で決めている
猫は食べ物の安全性やおいしさを、まず匂いで判断します。環境ニーズのガイドラインも、猫が周囲を評価するときに嗅覚と化学的な情報に全面的に依存している、と述べています。
ここから2つのことが導けます。1つは、匂いが立たないものは、そもそも食べ始めてもらえないということ。もう1つは、鼻づまりなどで匂いが分からなくなると、食欲そのものが落ちるということです。後者は ISFM のガイドラインが明記しています。
保護されたばかりの猫は、くしゃみや鼻水が出ていることが少なくありません。その状態で食べないなら、フードの好み以前の問題である可能性があります。これも動物病院に伝えてください。
猫の嗅覚とおいしさの関係は、猫の嗅覚と「おいしい」の科学で詳しく扱っています。
少量を、何回にも分けて
1日2回、決まった時間に、決まった量。この与え方は人間の生活には合っていますが、猫の食べ方には合っていません。
Feeding Cats for Optimal Mental and Behavioral Well-Beingによれば、野生や野良の環境で猫は1日に10〜20回の小さな狩りをします。飼育下で自由に食べさせると、1日およそ8〜16回に分けて食べる傾向があります。もともと、少しずつ何度も食べる動物です。
食欲が落ちているときの目安として、ISFM のガイドラインは1日の量を4〜6回に分けることを挙げています。1回の量は少なくしてください。皿に山盛りになっていること自体が、圧迫になることがあります。
タイミングにも触れておきます。緊張が強い猫は、家が静まりかえる夜中にだけ食べることがあります。日中まったく減っていなくても、朝になると減っていた、というのはよくあることです。夜寝る前に新しいごはんを置いておくことには、はっきりした意味があります。
一度に何種類も並べない
ここが、日本語の検索結果の主流と最も食い違う部分です。
国際猫医学会は、食べさせる工夫の一覧の中でこう書いています。「一度に複数の種類のフードを出すことは避けてください——猫にとって圧倒的になりうるからです」(International Cat Care)。
好みが分からないから、いろいろ並べて選んでもらう。気持ちとしては自然です。しかし、選択肢が一度にたくさん提示されると、猫は混乱し、かえって食事そのものを拒むことがある、というのが資料の立場です。
試すなら、1回につき2〜3種類まで。それも、落ち着いてからです。この点は後の章でもう一度扱います。
食べ残しは片づけ、皿は毎日洗う
地味ですが、効きます。
やりがちなのは、皿に残っているところへ新しいフードを継ぎ足すことです。同じ資料は、これを避けるべき行為として挙げています。残ったフード、唾液、細かなカスが蓄積すると、そこで細菌が急速に増えます。その不快さ自体が、食べなくなる直接の原因になります。
フードボウルも水皿も、毎日いったん完全に空にして洗ってください。
ウェットフードは特に、置きっぱなしにしないでください。水分が多いぶん、時間が経つと乾いて、香りが飛びます。猫にとっての魅力は、時間とともにはっきり落ちていきます。食べきれる量をその都度出し、残ったら片づける。これを繰り返します。
やってはいけない3つのこと
ここまでの内容を、裏側からまとめます。この3つを避けるだけで、状況が悪化する経路のかなりの部分を塞げます。
1. 無理に食べさせない
シリンジで口に流し込む、指でフードを押し込む。こうした強制的な給餌について、国際猫医学会の表現は明確です。
「決して無理に食べさせないでください。シリンジでの給餌や、口にフードを押し込むことは、猫にとってストレスであり、重い医学的合併症のリスクがあります。さらに、まったく食べなくなる原因にもなりえます」(International Cat Care)。
別のページでも「猫を決して無理に食べさせてはならない」と繰り返されています。理由は2つです。食べ物への嫌悪を強めてしまうこと、そして抵抗した猫が食べ物を気管に吸い込む危険があることです(International Cat Care「Inappetence in cats」)。コーネル大学の資料も、強制給餌は逆効果になりうるとしています。
この記事では、強制給餌のやり方を書きません。動物病院の指示がない限り、行わないでください。必要な場合は、獣医師が方法を含めて指示します。栄養支援が要る状態なら、給餌チューブを含めた選択肢が検討される領域です。家庭で見よう見まねで行う場面ではありません。
2. 隠れている猫を引っ張り出さない
顔が見たい。安否を確かめたい。その気持ちは分かります。それでも、引っ張り出さないでください。
国際猫医学会の表現は、おびき出すことまで含めて否定的です。「隠れていますか? 誘惑に駆られても、おびき出そうとしないでください」。代わりに勧められているのが、同じ部屋で本を読む、テレビを見る、という過ごし方です。そして、床に座って猫と同じ高さで過ごすことが、猫にとって近寄りやすさにつながる、とも書かれています(International Cat Care)。
やることは「何もしない」ですが、それは放置とは違います。同じ空間にいて、無害な存在として認識してもらう時間です。猫の側から近づいてきて、匂いを嗅ぎ、頭をこすりつけてきたら、そのときが最初の接触のタイミングです。撫でるのは頭や頬、あごのまわりから。猫が立ち去ったら、追いかけないでください。
3. ストレスがかかっている間に、新しいフードに変えない
この記事の結論に戻ります。なぜ「変えるな」なのか、その仕組みをここで書きます。
学習性の食物嫌悪(learned food aversion)という現象があります。体調が悪いとき、あるいは強い不安の中にいるときに出された食べ物は、その不快な感覚と結びついて記憶されます。結果として、体調が戻り、環境に慣れたあとになっても、その食べ物を拒み続けるようになりえます。
国際猫医学会は、この理屈から次のように書いています。「猫の具合が悪く、あまり食べていないときに、療法食のような食事を出さないでください。長期的にそれを食べる必要があるなら、かえって遠ざける原因になります。だから、元気になってから新しい食事へ切り替えてください」(International Cat Care)。
ISFM のガイドラインも同じ方向です。入院中の猫に馴染みのない味や食感を出すと、食欲不振や食物嫌悪を招きうるため、そうした食事はストレス下で導入すべきではない、としています(ISFM Consensus Guidelines 2022)。
迎えたばかりの家は、猫にとって強いストレスの中にあります。そこで新しいフードを次々に試すことは、将来そのフードを食べてもらえなくする行為になりかねません。いま試して食べなかったものは、落ち着いてからも食べない可能性が残ります。
だから、変えるのは後です。順番の問題であって、フードの善し悪しの問題ではありません。
「水を飲まない」のほうが、実は急を要する
ごはんばかりに目が行きますが、水も同じくらい見ておいてください。というより、食べていない猫では水分の入口が二重に閉じていることがあります。
猫はもともと、獲物から水を摂る動物
イエネコの直接の祖先は、半砂漠に生息していたリビアヤマネコです。野生下での食事は、ネズミや小鳥、ウサギといった小さな獲物が中心でした。これらの獲物の体は、およそ65〜75%が水分です(Diet format, protein, amino acids, salt, and osmolytes, as well as water viscosity, affect water consumption in domestic cats, J Anim Sci 2026)。
つまり猫は、食べることで必要な水分のほとんどを同時に満たす、という戦略で進化してきました。その結果として、自分から水を飲もうとする欲求が、他の哺乳類に比べて低く保たれています。
「水皿を置いてあるのに飲まない」のは、しつけの問題でも性格の問題でもありません。もともとそういう設計になっています。
水を飲むのは、猫にとって効率が悪い
ここは、日本語の記事でほとんど触れられていない部分です。数字で見ると、事情がはっきりします。
猫は人のように水を吸い込めません。犬のように舌をすくい状に丸めることもできません。舌の裏を水面に軽く触れさせ、素早く引き上げたときにできる水の柱を、口の中に閉じ込めます。これがラッピングと呼ばれる飲み方です。
この方法の効率が、同じ資料に書かれています。
- ラッピングの回数は1秒あたり約3.5回
- 1回で口に入る水はおよそ0.14mL
- 体重4kgの猫が必要量をすべて水皿から摂ろうとすると、1日に1,429〜1,714回のラッピングが必要になる計算
- 時間にすると、1日あたり約6.8〜8.2分、ひたすら舐め続けることになる
猫が水皿の前で8分間、休まず舐め続けている姿を見たことがある方は、まずいないと思います。物理的に、水皿だけで水分を満たすのは無理があります。
食べないと、水分の入口も同時に閉じる
ここまでを踏まえると、食べない状態の重さが変わって見えてきます。
多くの猫は、1日の水分の大部分を食事から得ています。だから、食べなくなることは、同時に最大の水分補給の機会を失うことを意味します。そして脱水が進むと、気持ちの悪さや活動の低下が起こり、それがさらに食欲を落とします。悪循環になります(Cornell Feline Health Center「Hydration」)。
ですので、記録するときは「食べた量」と「飲んだ量」の両方を見てください。水皿の減り具合は、ペットボトルなどで足した量を控えておくと分かりやすくなります。まったく飲んでいない状態が続くなら、それも動物病院に伝える材料です。
水皿の置き方
水を飲みやすくする工夫は、ガイドラインにまとまっています。
- 数は「頭数+1」。それぞれ違う場所に置きます。同じ場所に並べると、猫からは1つの水源にしか見えません
- フードから1メートルほど離す。近すぎると食べかすが落ちて水が汚れます
- トイレからは遠ざける。
- 縁ぎりぎりまで注ぐ。猫は頭を深く下げるのを嫌がります。周囲を見ながら楽に飲める高さにします
- 広く浅い、陶器かガラスの皿。フードの皿と同じ考え方です
- 静かで、背後が確認できる場所に。人の通り道は避けます
水道水を嫌がるなら、ろ過した水や、一度沸かして冷ました水を試す方法も挙げられています。流れる水を好む猫のために、循環式の給水器という選択肢もあります。
水を飲まない猫への対応全般は、猫が水を飲まないときのガイドにまとめています。
落ち着いてきたら:食歴が分からない猫の、味と形の試し方
ここからは、1〜2週間が過ぎて、猫が部屋の中を歩き、決まった時間に食べるようになってからの話です。順番を守ってください。まだ隠れている段階でこの章を実行しないでください。
好みは、子猫のころに決まっている
猫の味や食感の好みは、幼少期の経験でおおむね決まるとされています(Feeding Cats for Optimal Mental and Behavioral Well-Being)。子猫のころに特定のフードや食感ばかりを食べて育った猫は、成猫になってから、馴染みのない味や食感に強い警戒を示します。
保護猫で「食歴が分からない」というのは、つまりこの設計図が手元にないということです。何が正解かを当てにいくのではなく、手がかりを増やしていくという考え方に切り替えてください。
そして、分からないからこそ、時間をかける価値があります。急いで正解を引き当てる必要はありません。
新しいものを警戒する性質(ネオフォビア)
猫には、初めて見る食べ物を避ける傾向があります。ネオフォビア(新奇恐怖)と呼ばれます。匂いを嗅いだだけで歩き去る、口をつけずに拒む、といった行動として現れます。
拒否のサインは、行動として観察されています。尻尾を振る、毛づくろいを始める、耳を後ろに伏せる、食べずに鼻のまわりをなめる。これらは、嗜好性が低いと判断したときに出る行動として報告されています。
一方で、逆の性質もあります。新しいフードを出されたとき、最初だけ目新しさで好んで食べることがあります。ただし、この効果は一時的です。数日で元に戻ることがあります。
ここが実務上の落とし穴です。1回食べたからといって、その子の好みだと確定させないでください。数日から1週間、続けて出して反応を見ます。
同じ資料は、偏食や新奇恐怖を防ぐ方法として、その猫が受け入れている複数のフードを、日常のメニューに定期的に組み込んでおくことを挙げています。1つに固定しないほうが、後々の選択肢が広がるという考え方です。
切り替えは混ぜない。別々の器に、並べて出す
いよいよフードを変えるとき、手順は決まっています。
いまのフードと新しいフードを、同時に、ただし別々の器に入れて並べて出します。猫は一般に、2種類の食べ物が1つの器で混ざっているのを好まないためです。いまのフード75%・新しいフード25%の量から始め、少しずつ割合を入れ替えていきます(International Cat Care「How to change your cat's food to a new diet」)。
かかる日数は、猫によって幅があります。5〜7日で移行できる猫もいれば、2〜8週間かかる猫もいます。同じ資料は、ペースは猫に決めさせるという考え方を示しています。日数を先に決めて猫を合わせるのではありません。
いっぽう、フードに少しずつ混ぜていく方法を示している資料もあります(Tufts University Cummings School「How to transition your pet to a new food」)。混ぜても問題なく食べる猫であれば、この方法でも構いません。ただし混ぜたとたんに両方とも食べなくなる猫は珍しくなく、その場合は原因が分からないまま行き詰まります。
先に別々の器で始めておけば、そのつまずき自体が起きません。迎えたばかりで前の食歴も好みも分からない猫では、こちらのほうが安全です。
日本の公的な資料としては、環境省の飼い主のためのペットフード・ガイドラインもあります。フードの与え方や保存についての一般的な考え方が整理されています。
一度に2〜3種類まで。香りと形の2軸で見る
前の章で書いた通り、一度に何種類も並べないでください。圧倒されて、かえって食べなくなります。試すなら1回につき2〜3種類までです。
そのうえで、何を見るか。おすすめは2つの軸に絞ることです。
- 香りが立つかどうか。猫は舌より先に鼻で判断します。皿に出したときの反応、近づいてくるまでの速さを見ます
- 形状の好み。切り身のような大きめの塊か、小魚のようなまるごとの形か、細かくほぐれたものか。同じ魚でも、形が違うと反応が変わることがあります
この2軸で記録を取っておくと、次に選ぶときの手がかりになります。「香りが強いものには寄ってくるが、大きい塊は残す」といった傾向が見えてきます。味・香り・食感という観点からのフードの選び方は、味・香り・食感で選ぶ基準にまとめています。
ニコルスの初回トライアルセットには、切り身と小魚の2種類が入ります。形状の好みを2つ同時に見られる構成です。1パックは65〜80gなので、合わなかったときの負担も小さく済みます。ただし、これはあくまで落ち着いてからの選択肢です。迎えた直後に主食を切り替える用途では勧めません。理由は次の章で書きます。
ニコルスがこの場面で言えること・言えないこと
ここまで、外部の資料に基づいて書いてきました。この章だけは、私たちの商品についての話です。言えることと、言えないことを、両方書きます。
無加水調理だから、香りが立つ
ニコルスは、三重県熊野灘で獲れた天然の魚を使っています。製法の特徴は無加水調理です。水を加えず、魚自身の水分だけで調理しています。
水で薄めていないぶん、魚の香りがそのまま残ります。これは製法の事実として書けることです。前の章で書いた通り、猫は舌より先に鼻で判断します。香りが立つかどうかは、食べ始めてもらえるかを左右します。
加熱加圧調理も行っています。骨までやわらかくなるのが分かりやすい効果ですが、それだけではありません。一部の魚には、ビタミンB1を分解する酵素であるチアミナーゼが含まれます。十分な加熱で、この酵素は働かなくなります。加熱加圧は、食感のためであると同時に、安全のための工程でもあります。
無加水調理については、無加水調理のキャットフードの記事で詳しく書いています。
1パック65〜80g。外したときの損失が小さい
食歴の分からない猫に何かを試すとき、避けたいのは大きい単位で外すことです。大袋を買って食べてもらえなければ、残りが手つかずで残ります。
ニコルスは1パック65〜80gの個包装です。未開封なら常温で12ヶ月保存できます。試して合わなかったときの負担が小さい、という点は事実として書けます。
ただし、「だから食べます」とは書きません。食べるかどうかは、その猫の好みと、そのときの状態で決まります。私たちに保証できることではありません。
魚種は、季節で変わるので書けない
ここは、私たちの情報開示の限界です。先に書いておきます。
ニコルスの原材料は「季節のお魚」としか表記できません。熊野灘でその季節に獲れた魚を使っているため、どの魚がどれだけ入るかが日によって変わるからです。
日本のペットフードの表示ルールでは、特定の魚種名を強調して表示・広告する場合、その原材料が一定の割合以上使われていることを示す責任が生じます。魚種が変動する以上、私たちはその立証ができません。だから書きません。
これは弱点でもありますが、正直に書いておきます。すでに特定の魚に食物アレルギーがあると分かっている猫には、原材料が特定できないことはリスクになります。その場合は、必ず動物病院に相談してから検討してください。
産地と製造の背景については、なぜニコルスは熊野灘の魚を選ぶのかに書いています。製造は三重県熊野市二木島で行っています。
最初の1週間に「切り替え」として使ってほしくない
この記事の結論は「最初の1週間はフードを変えない」です。だから、迎えた直後に主食を切り替える用途では、ニコルスを勧めません。
自社の商品を扱う記事でこう書くのは奇妙に見えるかもしれません。しかし、記事の主張と商品の勧め方が矛盾したままでは、どちらも信用できないものになります。
整理します。
- 迎えた直後——勧めません。いま食べているものを続けてください。ここで新しいものを出すことは、学習性の食物嫌悪のリスクを負う行為です
- 1〜2週間が過ぎ、落ち着いてから——選択肢の1つとして。いまのごはんとは別の器に少量だけ並べて出すところから始めてください。ペースは猫に決めさせます
もう1つ、はっきり書いておくことがあります。香りの強いものを「呼び水」として使う場合、それだけで食事を済ませないでください。国際猫医学会は、食欲を引き出すための匂いの強い食べ物について、必要な栄養が揃わないため長期的に与えるべきではない、と釘を刺しています(International Cat Care)。
ニコルスを使う場合も同じです。いまのごはんに少量添える形から始めてください。
私たちが作っているものの考え方は、こだわりのページにまとめています。
よくある質問
迎えた初日に食べません。異常ですか?
成猫では珍しくありません。国際猫医学会は、不安の強い成猫について、最初の数日はごはんもトイレも夜中にしか使わないことがあると書いています。とても臆病な猫では、最初の24時間はそれすらしないこともあります。新しいごはんを置き、トイレを定期的に確認しながら見守ってください。ただし、それを超えて続くようなら動物病院に相談してください(International Cat Care)。
何日食べなかったら動物病院に行くべきですか?
資料に書かれている目安を並べます。成猫は食欲不振が24時間続いただけでも健康に深刻な影響が及びうるとされています。生後6週未満の子猫では12時間です(Cornell Feline Health Center)。完全に食事を拒否している状態が48時間以上なら直ちに(VCA Animal Hospitals)。いつもより食べる量が少ない状態が3日続くなら急いで連絡を(International Cat Care)。これは受診の目安であって、そこまで待ってよいという意味ではありません。
ペースト状のおやつしか食べません。どうすればいいですか?
迎えた直後に、まず口をつけてもらうきっかけとして使うこと自体は、短期的な呼び水になりえます。ただし、それだけで食事を済ませる状態を続けないでください。国際猫医学会は、食欲を引き出すための匂いの強い食べ物について、必要な栄養が揃わないため長期的に与えるべきではない、としています。おやつ以外を食べない状態が続くなら、動物病院に相談してください。
戻し方の手順そのものは、猫がおやつしか食べない|ごはんに戻す手順にまとめています。
フードを変えたほうがいいですか?
最初の1〜2週間は変えないでください。国際猫医学会は、前の環境と同じ食事を最初の1〜2週間続けることを勧めています。急な変更と、新しい家に慣れるまでのストレスが重なると、お腹をこわしたり下痢を起こしたりする原因になるためです。変えるなら、落ち着いてから、別々の器に並べて出す形で移行してください。かかる日数には幅があり、5〜7日で移行できる猫もいれば2〜8週間かかる猫もいます(International Cat Care/同「How to change your cat's food to a new diet」)。
一度にいくつも種類を出して選ばせるのはどうですか?
勧められていません。国際猫医学会は「一度に複数の種類のフードを出すことは避けてください」と明記しています。選択肢が多すぎると猫は圧倒され、かえって食べなくなることがあるためです。試すなら1回につき2〜3種類まで、それも落ち着いてからにしてください(International Cat Care)。
ずっと隠れています。引っ張り出すべきですか?
出さないでください。隠れることは、猫がストレスに対処するための重要な手段です。取り上げると、逃げられないと悟った猫が防御的な攻撃に出ることがあります。国際猫医学会は、おびき出そうとすることも含めて避けるよう書いています。代わりに、同じ部屋の床に座って本を読む、テレビを見るという過ごし方が勧められています(International Cat Care)。
無理にでも食べさせたほうがいいですか?
動物病院の指示がない限り、行わないでください。国際猫医学会は「決して無理に食べさせないでください」と明記しています。理由は2つで、食べ物への嫌悪を強めてしまうことと、抵抗した猫が食べ物を気管に吸い込む危険があることです(International Cat Care「Inappetence in cats」)。栄養支援が必要な状態なら、獣医師が方法を含めて判断します。
水を全然飲みません。
猫はもともと、水を飲む欲求が低い動物です。祖先が半砂漠に住み、獲物から水分を摂っていたためで、その獲物の水分はおよそ65〜75%でした。さらに、1回のラッピングで口に入る水は約0.14mLしかありません(J Anim Sci 2026)。食事からの水分が大きな比重を占めます。水皿は頭数+1を別々の場所に、縁ぎりぎりまで注いで置いてください。まったく飲まない状態が続くなら、動物病院に相談してください。
まとめ
この記事の結論
3行にまとめます。
- 最初の1〜2週間は、前の環境と同じごはんを続けてください。ストレスの中で新しいフードを出すと、学習性の食物嫌悪を招き、落ち着いた後も拒否されることがあります
- 変えるのはフードではなく、部屋と出し方です。1部屋に限定し、隠れ場所を作り、ごはん・水・トイレを離して置く。広く浅い皿で、少量を何回にも分けて出す
- 数字は受診の目安であって、安全の保証ではありません。成猫で24時間、いつもより少ない状態が3日続いたら、動物病院に相談してください
そして、やってはいけないことは3つです。無理に食べさせない。隠れている猫を引っ張り出さない。ストレスの中でフードを変えない。
落ち着いてから、選び直すために
1〜2週間が過ぎ、猫が部屋を歩き、決まった時間に食べるようになったら、そこからが選び直しの時間です。
ニコルスは、三重県熊野灘で獲れた季節のお魚を、水を加えずに調理しています。保存料・着色料・香料・増粘剤は使っていません。初回トライアルセットには切り身と小魚の2種類が入るので、形状の好みを一度に2つ確かめられます。使うときは、いまのごはんに少量添えるところから始めてください。
食歴の分からない猫と暮らすことは、手がかりを1つずつ増やしていく作業です。急ぐ必要はありません。今日は、静かな部屋と、いつもと同じごはんがあれば十分です。
監修:NICO-LS開発チーム